今でも忘れられない日があります。

カミが突然倒れた日ではありません。

食欲がなくなった日でもありません。

大きな病気が見つかった日でもありません。

本当に小さな出来事でした。

ただ、歩き方が少しだけ変だったのです。

 

ほんの少しだけ。

立ち上がる時にふらつく。

歩き出しが少し遅い。

いつもなら勢いよく走るのに、どこか動きが鈍い。

そんな程度でした。

たぶん他の人が見たら気づかなかったと思います。

でも毎日見ている僕には、

「なんか違う」

という感覚がありました。

その時のことを今でも覚えています。

気になって何度も様子を見ました。

そしてスマホで調べました。

斜頸。

中耳炎。

神経疾患。

検索結果には怖い言葉ばかり並びます。

調べれば調べるほど不安になりました。

でもその時、同時に思ったことがあります。

それは、

「もし毎日見ていなかったら気づかなかったかもしれない」

ということでした。

うさぎは病気を隠す動物です。

野生では弱っている姿を見せることが命取りになります。

だから具合が悪くても、ぎりぎりまで普段通りに見せようとします。

実際、カミもそうでした。

牧草も食べる。

おやつも欲しがる。

トイレもする。

見た目だけなら普通です。

でも何かが違う。

その違和感だけがありました。

うさぎと暮らしていると、病気の知識を覚えることも大切です。

うっ滞。

不正咬合。

斜頸。

呼吸器疾患。

知っていた方がいい病気はたくさんあります。

でもカミと暮らしていて感じたのは、病名を知ることより大切なことがあるということでした。

それは、普段のカミを知ることです。

どれくらいのスピードで走るのか。

どれくらい牧草を食べるのか。

何時頃に寝るのか。

おやつを見たらどんな顔をするのか。

いつもを知っているから、違和感に気づける。

病気のサインはそこから始まるのだと思います。

例えば、

今日は牧草を食べる量が少ない。

うんちが少し小さい。

動きが少し鈍い。

呼んでも反応が遅い。

どれも小さな変化です。

一つだけなら気のせいかもしれません。

でも、その小さな違和感が病気の始まりだったということもあります。

だから僕は今でも、病気を見つけるために観察しているという感覚はありません。

ただカミを見ています。

いつも通りかどうか。

楽しそうかどうか。

機嫌はいいかどうか。

それだけです。

うさぎは言葉を話せません。

「今日は少し具合が悪い」

とも言えません。

だから代わりに、

行動で伝えています。

食欲で伝えています。

うんちで伝えています。

歩き方で伝えています。

僕たち飼い主にできることは、その小さなサインに気づくことなのかもしれません。

あの日、カミの足が少しだけふらついた。

今思えば、本当に小さな変化でした。

でもあの出来事があったからこそ、病気の知識より先に、毎日見てあげることの大切さを教えてもらった気がします。

うさぎは病気を隠します。

だからこそ、異変に気づけるのは、毎日そばにいる飼い主だけです。

カミが教えてくれた一番大切なことは、病気の名前ではありませんでした。

「今日は何か違う」
その小さな変化に気づくこと。

きっとそれが、うさぎと暮らす毎日の中で、いちばん大切なことなのだと思います。