ペットが病気になったら仕事を休みますか?

この質問に対して、昔の僕は迷った。

休みたい。

会社に迷惑がかかる。

みんな忙しい。

自分だけ休むわけにはいかない。

そう考えていた。

多くの会社ではペットを理由に休むことを快く思わない人もいる。

「ペットなんだから」

「家族とは違うだろ」

そんな空気は確かに存在する。

だから僕も言えなかった。

ペットが病気だから休みます。

その一言が言えなかった。

周りにどう思われるかが怖かった。

責任感がないと思われるのも嫌だった。

仕事を軽く考えていると思われるのも嫌だった。

だから僕は、その空気に従った。

そして、その判断を心から後悔する日が来た。

 

あの日、カミの様子がおかしかった。

いつもと違った。

元気がない。

ご飯も食べない。

明らかに体調が悪かった。

本当ならすぐ病院へ連れて行くべきだった。

でも平日だった。

仕事があった。

僕は迷った。

病院か。

会社か。

そして会社を選んだ。

仕事が終わってから病院へ行こう。

そう決めた。

今思えば、その時点で答えは出ていた。

迷うべきではなかったのだ。

 

会社に向かう途中も落ち着かなかった。

仕事中も気になった。

時計ばかり見ていた。

早く帰りたい。

早く様子を見たい。

そう思いながら仕事をしていた。

仕事が終わると、急いで家に帰った。

そしてカミを見た瞬間、背筋が凍った。

朝より悪化していた。

明らかに悪くなっていた。

僕は慌てて抱き上げた。

嫌な想像が頭をよぎる。

間に合わないかもしれない。

本気でそう思った。

病院へ向かう車の中で、何度も後悔した。

どうして会社へ行ったんだ。

どうしてすぐ病院へ連れて行かなかったんだ。

どうして周りの目を気にしたんだ。

どうして。

どうして。

どうして。

 

病院の待合室でカミを抱きながら、そんなことばかり考えていた。

診察室に呼ばれるまでの時間が異常に長く感じた。

時計を見ても数分しか経っていない。

それなのに何十分も待っている気がした。

もし手遅れだったら。

もしもう助からなかったら。

もし今日が最後の日だったら。

そんな考えが頭の中を何度もよぎる。

そのたびに、胸の奥が締め付けられた。

僕は会社で仕事をしていた数時間を思い出した。

あの時間、

カミは苦しんでいたのかもしれない。

助けを待っていたのかもしれない。

そう思うと苦しかった。

本当に苦しかった。

そして診察が終わった。

先生は言った。

「大丈夫ですよ」

その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けた。

助かった。

カミは助かった。

先生の治療のおかげだった。

運も良かったと思う。

でも、もし違っていたら。

もしあの日、僕が帰宅する前に息を引き取っていたら。

もし、病院へ連れて行く時間が遅れたことで手遅れになっていたら。

僕は何と言い訳しただろう。

仕事だったから。

会社があったから。

休みにくかったから。

そんな言葉を並べたところで、何になるのだろう。

死んでしまったカミは戻らない。

どんな言い訳も、ただの自己満足だ。

そのとき思い出した。

カミを迎えた日のことを。

小さな命を抱いたとき、僕は決めたはずだった。

幸せにしようと。

守ろうと。

最後まで責任を持とうと。

あの日の僕は確かにそう思った。

それなのに、会社の空気や周囲の目を気にして、一番守るべき存在を後回しにしていた。

僕はその事実が悔しかった。

情けなかった。

そして申し訳なかった。

 

仕事は大切だ。

働くことも責任だと思う。

会社に迷惑をかけたくない気持ちもある。

でも、それ以上に大切なものがある。

僕にとっては、カミの命だ。

それ以来、僕は決めている。

カミに何かあったら迷わない。

仕事を休む。

嫌味を言われてもいい。

評価が下がってもいい。

理解されなくてもいい。

それでカミを守れるなら、その代償は安い。

 

ペットは家族ではない。

そう思う人もいるだろう。

それはそれでいい。

考え方は人それぞれだ。

でも僕にとってカミは家族だ。

一緒に笑い、

一緒に心配し、

一緒に歳を重ねてきた大切な存在だ。

だから守る。

何があっても守る。

 

あの日の後悔は消えない。

たぶん一生消えないと思う。

でも、その後悔が教えてくれたことがある。

本当に大切なものは、失いかけたときに初めて気づくことがある。

だから僕はもう迷わない

会社より、何よりも先に守るべきものがある。

僕にとって、それはカミだ。

そしてこれからも、その気持ちは変わらない。