うさぎの体調不良。“大丈夫?”の言葉がうさぎを不安にさせているのかもしれない
カミが体調を崩すたびに、僕は何度も声をかけた。
「大丈夫?」「痛くない?」「しんどいの?」
心配だから聞いた。そうすることが、カミのためだと思っていた。でも後になって、ふと思うことがある。あの言葉が、カミをもっと不安にさせていたんじゃないかって。
うさぎを飼っている人なら、きっとわかると思う。あの、小さな体で一生懸命生きている姿を見ていると、少しの変化でも不安になる気持ち。でもその「心配」が、実はうさぎにとって逆効果になるかもしれない。今日は、そんな話をしたい。
うさぎは、とても弱い動物だ。
少しごはんを食べない。少しうんちが出ない。それだけで、命に関わることがある。
しかもうさぎは、体調不良を隠す。野生では弱った姿を見せると狙われるから。その本能が、今も体の中に残っているらしい。
だから飼い主は、毎日よく見ていないといけない。食べ方はいつも通りか。歩き方は変じゃないか。うんちの大きさはどうか。
うさぎと暮らしていると、自然と小さな変化に敏感になっていく。
僕もそうだった。
だから、カミの様子が少しでも違うと、すぐに声をかけていた。
「大丈夫?」「痛くない?」「しんどいの?」と。
言葉には、空気がある。
人間同士でもそうだけど、「大丈夫?」と何度も繰り返されると、だんだん本当に悪い気がしてくることがある。その言葉には、心配が乗っているからだ。不安そうな顔、焦った声、落ち着かない空気。そういうものは、言葉以上に相手へ伝わる。
うさぎは、人間が思っている以上に敏感な動物だ。飼い主の表情や声のわずかな変化を、きっと細かく感じ取っている。だから飼い主が不安になれば、うさぎも不安になる。そのストレスが、余計に体を弱らせてしまうこともあるんじゃないか。
そんなことを、よく考えるようになった。
僕自身にも、似た経験がある。
体調が悪くなると、急に怖くなる。「これ、重い病気じゃないか」「もっと悪化するんじゃないか」。そんなことを考えていると、本当に体がどんどん重くなっていく。
でも病院へ行って、先生に「大丈夫ですよ、3日もすれば治ります」と言われると、不思議なくらい体が軽くなる。さっきまでの不安は何だったんだろう、と思うくらいに。
気持ちって、体に影響するんだと思う。きっとうさぎも、同じなんじゃないか。
カミをお迎えしたうさぎ専門店の店長が、よく言っていた言葉がある。
僕が心配そうに相談するたびに、その店長は笑いながら言った。
「過保護だよ」
最初は、その意味がよくわからなかった。心配して何が悪いんだ、と思っていた。
でも今なら、少しわかる気がする。心配しすぎる気持ちは、うさぎにも伝わってしまう。だから必要以上に不安を見せちゃいけない。そういう意味だったのかもしれない。
店長はこんなことも言っていた。「ほったらかしくらいの方が元気になるよ」。かなり変わった人だった。でも、うさぎのことになると本当に真剣で、カミが体調を崩したときも何度も助けてくれた。しかも、お金も取らずに。口コミでも「ここのうさぎは長生きする」と評判の店だったから、長年の経験からわかっていたんだと思う。過剰な心配が、うさぎを弱らせることもあるって。
もちろん、体調不良を放置していいわけじゃない。
異変に気づくことも、病院へ連れていくことも、大切だ。
でも、そのうえで思う。
うさぎが苦しそうなときこそ、飼い主は落ち着かなきゃいけない。
笑顔で、「大丈夫だよ」「すぐ元気になるよ」と、いつも通りに接してあげること。それも、すごく大事なことなんじゃないかって。
これは、本当に難しい。
大切だから心配になる。大好きだから不安になる。それを隠すなんて、簡単じゃない。
僕も、できていた自信はない。むしろカミに、不安な顔をたくさん見せてしまっていたと思う。
カミは、もういない。だからこの考えが本当に正しかったのか、もう確かめることはできない。
でももし、今もカミが隣にいて、体調を崩していたら。
僕はきっと、前みたいに焦った顔はしない。
笑いながら、こう言うと思う。
「大丈夫だよ。3日したら治るよ」って。
そうやって、安心できる空気を、カミに返してあげたかった。