最近、思うことがある。
カミは頭を撫でられるのが好きすぎる。
近くへ来る。
頭を差し出す。
そして待つ。
撫でない。
するともう一歩近づく。
それでも撫でない。
すると今度は頭をグイッと押しつけてくる。
完全に命令である。
お願いではない。
「撫でろ」
である。
仕方なく頭を撫でる。
するとカミの顔が変わる。
目が細くなる。
耳が下がる。
体の力も抜ける。
そして最後には目を閉じる。
さっきまで、
「おやつよこせ」
だの、
「そこどけ」
だの、
偉そうだったうさぎが、突然とろけた餅みたいになる。
あれは何なのだろう。
気持ちいいのだろうか。
もちろん気持ちいいのだと思う。
でも、それだけではない気がする。
なぜならカミは、頭を撫でられているとき何も考えていない顔になるからだ。
人間も似たような瞬間がある。
お風呂に入っているとき。
布団に入ったとき。
好きな音楽を聴いているとき。
考え事が少し止まる。
頭の中が静かになる。
「ああ、楽だな」
と思う瞬間だ。
カミにとって頭を撫でられる時間は、そんな時間なのかもしれない。
うさぎは野生では常に周囲を警戒して生きている。
音を聞く。
匂いを感じる。
危険がないか確認する。
小さな体で毎日神経を使っている。
だから撫でられているときくらい、全部忘れたいのかもしれない。
そう考えると少し面白い。
僕は一生懸命撫でている。
ところがカミは、僕に感謝しているというより、温泉に入っているおじさんみたいな顔をしている。
「ふぅ~」
そんな声が聞こえてきそうだ。
きっと頭の中は空っぽである。
でも、その顔を見るのが好きだ。
頭を撫でているうちに、カミの目はだんだん細くなる。
体の力が抜けて、まるで溶けていくみたいにリラックスする。
その姿を見ていると、こちらまで安心した気持ちになる。
そして今日もカミは頭を差し出してくる。
僕は黙って撫でる。
カミは目を閉じる。
たぶんこれが正解なのだろう。
言葉はいらない。
理由もいらない。
ただ安心できる相手のそばにいる。
カミを見ていると、幸せというのは案外そんなものなのかもしれない。