うさぎと目で会話できる?|見つめ合って分かった、飼い主の勘違い
最近、僕は気づいてしまった。
もしかすると、うさぎとは目で会話できるのではないか、と。
きっかけは、うちのうさぎのカミである。
ある日、部屋でのんびりしていると、何やら視線を感じた。
じーっ。
なんとなく気になる。
本を読んでいても気になる。
スマホを見ていても気になる。
誰だろうと思って顔を上げると、カミがこちらを見ていた。
じーっ。
微動だにしない。
その目を見た瞬間、僕は思った。
「これは何か伝えたいことがあるに違いない」
人間だってそうだ。
言葉を使わなくても、目で気持ちを伝えることがある。
好きな人を見る目。
心配している目。
怒っている目。
目には感情が出る。
だったら、うさぎだって同じかもしれない。
僕は少し感動した。
ついにカミと心が通じ合う日が来たのではないか、と。
そこで僕もカミを見つめ返した。
じーっ。
カミも見ている。
じーっ。
これは間違いない。
会話が始まっている。
僕は心の中で話しかけた。
「カミ、僕はお前のことが大好きだぞ」
カミは黙って見ている。
「いつも癒やしてくれてありがとう」
じーっ。
「これからも仲良く暮らそうな」
じーっ。
返事はない。
でも、見つめている。
僕は確信した。
通じている。
すると次の瞬間、カミが立ち上がった。
そして僕のほうへ歩いてくる。
おお。
ついに来た。
愛情が伝わったのだ。
僕は胸を熱くしながら待った。
しかし、カミは僕の横を素通りした。
そして、そのまま餌箱の前で立ち止まった。
……。
なるほど。
ご飯か。
どうやらさっきの視線は、
「愛情を伝えたい」
ではなく、
「早くペレットを出せ」
だったらしい。
気を取り直して、翌日も挑戦した。
カミがこちらを見ている。
僕も見る。
じーっ。
「カミ」
じーっ。
「僕のこと好き?」
じーっ。
「信頼してる?」
じーっ。
するとカミは突然走り出した。
おお、何か反応した。
そう思ったら、部屋の隅に落ちていた乾燥パパイヤのかけらを発見して食べ始めた。
どうやら会話ではなかった。
パパイヤだった。
そんなことが何度も続いた。
僕が感動しているときに限って、ご飯。
僕が心を通わせているつもりのときに限って、おやつ。
どうやらカミの人生の大半は食べ物でできているらしい。
いや、人生ではない。
うさぎ生だ。
でも、そんなある日、ふと思った。
人間も似たようなことをしているのではないだろうか。
僕たちは相手の表情を見て、
「怒ってるのかな」
と思う。
返事が遅いと、
「嫌われたかもしれない」
と思う。
逆によく話しかけられると、
「もしかして好かれてる?」
と思う。
でも実際に聞いてみると全然違ったりする。
相手はただ疲れていただけだったり、
仕事が忙しかっただけだったり、
たまたま機嫌が良かっただけだったりする。
つまり人は、自分の見たいものを見ている。
僕がカミの視線に愛情を感じたように。
本当はただ、
「飯」
だったとしても。
そう考えると、人間関係も少し気楽になる。
相手の気持ちを全部理解しようとしなくていい。
だって本当の気持ちなんて分からないのだから。
分からないままでも、一緒にいられる。
むしろ、そのくらいがちょうどいいのかもしれない。
今日もカミがこちらを見ている。
じーっ。
僕も見返す。
じーっ。
「カミ」
じーっ。
「僕たち、心が通じ合ってるよな?」
するとカミは立ち上がり、餌箱を前足でツンツンした。
どうやら今回も、
愛情ではなく、ご飯の話だったらしい。
うさぎと目で会話するのは難しい。
でも、飼い主が勝手に幸せな勘違いをすることなら、たぶん簡単である。