うちのうさぎは、疲れるとすぐに休む。

さっきまで元気に走り回っていたのに、急にピタッと止まって、その場に座り込む。

そして、何事もなかったかのように目を閉じる。

最初は驚いた。

「え、さっきまであんなに動いてたのに?」と。

でも、うさぎにとっては普通のことらしい。

疲れたから、休む。

ただ、それだけだ。

 

一方で、人間はどうだろう。

疲れていても、なかなか休めない。

「まだいける」
「ここで休んだらダメだ」
「みんな頑張ってるし」

そんなことを考えて、無理をする。

 

僕もそうだった。

仕事で疲れていても、「大丈夫です」と言っていたし、
本当は休みたいのに、無理して働き続けていた。

体にムチ打って。

そんな日が続いていた。

 

ある日、ソファでぐったりしていると、うさぎが隣に来た。

少しだけこっちを見て、何も言わずに、そのまま寝た。

 


「……いいな」

 

その姿を見て、ふと思った。

この子は、休むことに理由なんてつけていない。

疲れたから休む。

それだけだ。

 

人間は、休むために理由を探す。

「これだけやったのだから休んでいい」とか、
「今日は頑張ったから少しくらい」とか。

まるで、休むことに許可がいるみたいに。

 

でも、本当は逆なのかもしれない。

休むのは、特別なことじゃなくて、
生きるために必要なことだ。

疲れたまま動き続けると、
体より先に、心がすり減っていく。

イライラしたり、余裕がなくなったり、
どうでもいいことで落ち込んだりする。

本当はただ、休めばいいだけなのに。

少し止まって、少し力を抜くだけで、
またちゃんと動けるのに。

それをしないまま進もうとするから、
どこかで苦しくなる。

それだけの話なのに、
なぜか人は、それを後回しにしてしまう。

 


「疲れたら休んでもいいかな?」

うさぎ
「とっくに休んでる」


「罪悪感とかないの?」

うさぎ
「なにそれ」

 

どうやら、考えすぎているのは僕のほうらしい。

 

その日も、まだ仕事が残っていた。

本来なら、終わるまでやるのが当たり前だと思っていたし、そうしなければいけないとも思っていた。

でも、その日は手を止めた。

うさぎみたいに、理由もなく休んでみようと思ったからだ。

正直、落ち着かなかった。

「まだやれるだろ」
「サボってるだけじゃないか」
「仕事終わらなかったらどうしよう」

そんな声が、頭の中で何度も繰り返される。

 

それでも、そのまま何もしない時間を続けた。

最初は「こんなことしてていいのか」と思った。

でも、しばらくすると、少しだけ呼吸が楽になった。

 

うさぎみたいに、何も考えずに休むのは難しい。

でも、ほんの少しなら真似できる気がする。

 

疲れたら、ちゃんと休む。

理由なんていらない。

うさぎは、今日も当たり前のようにそうしている。