うちのうさぎ、カミはブラッシングが嫌いだ。

たぶん。

「好きなことランキング」を作ったら、

ご飯。

おやつ。

なでなで。

新しいふかふかマット。

の順番で並ぶと思う。

そして、

「できればやりたくないことランキング」

なら、かなり上位にブラッシングが入るはずだ。

だからブラッシングの日になると、ある現象が起きる。

さっきまで僕の近くでゴロンとしていたはずなのに、突然いなくなるのである。

消える。

本当に消える。

「え?」

と思うくらい綺麗に消える。

僕は部屋を見渡す。

いない。

ソファの下にもいない。

テーブルの下にもいない。

どこへ行った。

まさか瞬間移動か。

そんなことを思いながら探していると、すぐに見つかる。

なぜなら、

お尻が出ているからだ。

隠れているつもりなのだろう。

本人は完璧な作戦だと思っているのだろう。

しかし、

頭だけ隠れている。

白いしっぽも見えている。

後ろ足も見えている。

それどころか体の半分くらい見えている。

もはや隠れていない。

僕は毎回思う。

カミは、

「見つからないように隠れている」

のではなく、

「隠れたという事実が大事」

と、思っているのではないかと。

人間でもいる。

締切から逃げるために机を片づけ始める人。

テスト勉強しなきゃいけないのに部屋の掃除を始める人。

問題は何も解決していない。

でも本人の中では、

「やることはやった」

みたいな顔になっている。

カミもそれに近い。

見つかる。

でも隠れる。

毎回見つかる。

でもまた隠れる。

普通なら、

「この場所はダメだな」と思って別の場所を探しそうなものだ。

しかしカミは違う。

結果よりも、

「とりあえず隠れた」

という事実の方が大事らしい。

だから毎回同じ場所に行く。

毎回お尻が出る。

毎回捕まる。

そして毎回、

「なんで見つかったんだ?」

という顔をする。

 

そんなわけで今回も無事に捕獲された。

抱き上げられた瞬間、

「プゥ、プゥ」

と不満そうな声を出す。

完全に抗議である。

しかし換毛期の毛を飲み込んでしまうと体調を崩すこともある。

だからここは心を鬼にする。

ブラッシング開始。

最初は抵抗する。

逃げようとする。

でも数分後には、

「もう好きにしてくれ」

という顔になる。

そして無事終了。

部屋に戻ったカミは、

「やっと終わった……」

という顔をしていた。

しかし。

本当の地獄はここからだった。

僕はカメラを構えた。

せっかくフワフワになったのだから、記念写真を撮りたい!

飼い主として当然である。

カシャ。

カシャ。

カシャ。

カミの顔がどんどん険しくなる。

そして僕を見た。

その表情は完全にこう言っていた。

「お前さ……ブラッシングより性格悪いな」

違う。

誤解だ。

僕は可愛い姿を残したいだけなんだ。

だがカミは納得していない。

その後も撮影は続いた。

カシャ。

カシャ。

カシャ。

カミは完全に諦めた顔になっていた。

たぶん、

「もう好きにしろ」

と思っていたのだろう。

そしてその日以降。

カミはブラシを見ると逃げる。

カメラを見ても逃げる。

ブラシとカメラを同時に持つと、

「今日は人生で一番運が悪い日だ」

という顔で部屋の隅へ消えていく。

でも不思議なことに、

逃げ込む場所は毎回同じだ。

そして毎回お尻が出ている。

だから僕は今日もすぐ見つける。

たぶんカミは今でも思っている。

「なんで毎回見つかるんだろう」

と。

いや、違う。

見つかっているんじゃない。

隠れられていないのである。

そして、丸いしっぽがとっても分かりやすい目印になっているのだ。