最近、うちのうさぎのカミが、やたら強そうな顔をしている。
目つきが鋭い。
しかも、足をダンッ!と鳴らしてくる。
うさぎを飼っていない人は知らないかもしれないが、うさぎの後ろ足はかなり強い。
本気で蹴られると普通に痛い。
小動物なのに、脚力だけ妙に格闘家なのである。
そんなカミを見ていたら、ふと思った。
「うさぎって、強くなりたいと思うことあるのかな」と。
男なら、一度は考える。
強くなりたい。
かめはめ波を撃ちたい。
最低でも、「お前、怒らせたらヤバそうだな」と言われたい。
だから筋トレをする。
格闘技を始める。
プロテインを飲む。
でも現実は、ジムに入会しただけで満足して3日後にはポテチを食べながらYouTubeを見ている。
人類は昔から、「強くなりたい」という欲望と、「しんどいことしたくない」という欲望の板挟みで生きている。
そして、それはたぶんカミも同じだ。
ある日、カミが後ろ足をピョン!と蹴り上げた。
僕は思った。
「これは、かめはめ波の練習かもしれない」
そこから勝手に特訓が始まった。
「カミ!もっと腰を入れて!」
「気をためろ!」
「お前なら地球を救える!」
しかし、当の本人は、3秒後にはゴロンしていた。
やる気がない。
世界を救う気ゼロである。
でも、ここで僕は気づいた。
もしかすると、うさぎは“強くならなくていい生き物”なのかもしれない。
だって、もしうさぎが本当に強かったら怖すぎる。
想像してみてほしい。
今の可愛いうさぎが、もし熊レベルの戦闘力を持っていたら。
ご飯が遅れただけで、
「ドン!!」
と後ろ足で壁を破壊する。
抱っこしようとしたら、
「触るな」
と言いながら、こちらを3メートル吹き飛ばす。
しかも、うさぎは意外と気分屋である。
機嫌が悪い日は普通に無視してくる。
つまり、“あの性格のまま最強になったら危険”なのだ。
たぶん神様は、それをわかっていた。
だから、
「可愛いけど弱い」
という絶妙なバランスにしたのだと思う。
そして、人間も少し似ている気がする。
僕たちは、「強くなりたい」と思う。
でも、その“強さ”って何だろう。
筋肉か。
お金か。
地位か。
もちろん、それも大事かもしれない。
でも、本当に強い人って、「自分を大きく見せなくて落ち着いている人」のような気がする。
逆に、自分を強く見せようとしすぎると、どんどん攻撃的になる。
人を見下したり、勝ち負けばかり気にしたりする。
それって、本当に強いのだろうか。
カミは、身体は小さい。
でも、気に入らないことがあると足ダンして怒る。
眠ければ寝る。
食べたければ食べる。
嫌なことは嫌だと態度に出す。
ある意味、とても正直だ。
そして、そんな自由な姿を見ていると、「強くなること」より、「自分らしく生きること」のほうが大事なのかもしれないと思う。
たぶん、男が本当に欲しいのは、“最強”になることじゃない。
「このままの自分でも大丈夫だ」と思える安心感なのかもしれない。
ちなみに今日も、カミは後ろ足をダンッ!と鳴らしていた。
たぶん縄張り主張である。
でも僕には、こう聞こえた。
「か〜め〜は〜め〜……飯〜!!」
……うちのうさぎは、戦闘力より食欲に全振りしているらしい。