暑い夏が終わり、ようやく過ごしやすい季節がやってきた。
人間にとっても、うさぎにとっても快適な気温。暑さに耐える必要もなければ、寒さに震えることもない。
そんな最高の季節を、カミはどう過ごしているのか。
ご覧ください。
……動かない。
いや、気持ちよさそうなのは分かる。分かるけれども、くつろぎ方が尋常ではない。
まるで剥製だ。
部屋に飾っておいたら、来客に「これ、本物ですか?」と聞かれそうなレベルである。
カミ、起きてる?
おーい。
……。
返事がない。
どうやら、快適すぎて意識がどこかへ行ってしまったらしい。
人間だって、気持ちのいい気候の日には、何もしたくなくなることがある。
窓を開けると、ちょうどいい風が入ってくる。暑くも寒くもない。ソファに座ったら最後、もう立ち上がりたくない。
「ちょっと休憩」のつもりが、気づけば夕方。
そんな経験がある人もいるだろう。
カミも、きっとそんな感じなのだ。
いや、きっとというより、毎日そんな感じに見える。
寝る。
くつろぐ。
また寝る。
予定がシンプルすぎる。
スケジュール帳に書くことがあるとすれば、「本日も快適に過ごす」くらいだろうか。
しかも、ただ寝ているだけなのに、どこか堂々としている。
「何か問題でも?」
そんな雰囲気すら漂っている。
いや、問題はない。
ないのだが、もう少し動いてもいいのではないか。
せっかく涼しくなったのだから、部屋を探検するとか、走り回るとか、何かあるだろう。
……まあ、いいか。
本人がこれだけ気持ちよさそうなのだから。
それにしても、うらやましい。
僕が同じように一日中ゴロゴロしていたら、「そろそろ何かしようかな」と余計なことを考えてしまう。
ところがカミは、そんな気配すらない。
快適な気温を全身で味わい、ただただ、だらけている。
もしかすると、カミはくつろぎ方のプロなのかもしれない。
資格があるなら、一級くつろぎ士。
実技試験は、何時間でも気持ちよさそうに寝ていられること。
カミなら満点間違いなしだ。
ただし、ひとつだけ気になる。
あまりにも動かないので、たまに本気で剥製なのではないかと思ってしまうことだ。
カミ。
気持ちいいのは分かった。
でも、たまには動いてくれ。
…すると、、、
数秒後、鼻がピクピクと2回動いた。