夏の暑い日。
暑い、暑いと言っているうちに、気づけばカミの毛づくろいが始まった。
どうやら今日は、自分磨きに気合いが入っているらしい。
ペロペロ、ペロペロ。
「そろそろ、きれいにしなきゃね」
そんな声が聞こえてきそうだ。
まずは、よっこいしょ。
体を曲げて、ペロペロ。
今度は、もう少し奥まで。
ペロペロ、ペロペロ。
……それにしても、体が柔らかい。
大きな頭を、そんな角度に曲げられるのか。
普段、ストレッチをしている姿なんて見たことがない。
それなのに、カミの体はよく曲がる。
うらやましいような、ちょっと心配になるような。
おっ、今度はそっちか。
ペロペロ、ペロペロ。
ずいぶん熱心だ。
そこまで丁寧にお手入れしなくても、十分きれいだと思うのだが。
カミには、カミなりのこだわりがあるらしい。
しかも、やめない。
ペロペロ、ペロペロ。
……まだやるの?
忙しい、忙しい。
カミの毛づくろいは、まだまだ続く。
ところが、ここでひとつ問題がある。
きれいにするために舐めているはずなのに、舐めすぎて毛がベチョベチョになっているのだ。
いや、カミ。
ちょっと待ってくれ。
きれいにするのと、濡らすのは違うんじゃないか?
飼い主としては、そろそろ終了していただきたい。
でも、本人はやる気満々。
「まだ終わってないよ」
そう言いたげに、またペロペロ。
……もう好きにしてくれ。
そして、ようやく毛づくろいが終了。
カミは満足そうだ。
一仕事終えた顔をしている。
その姿を見て、僕も満足……と言いたいところだが。
ちょっと触ってみる。
ベチョッ。
……うん。
やっぱり濡れている。
カミはきれいになったつもりかもしれない。
でも、飼い主からすると、毛づくろいの前より気になる状態になっている。
それでも、本人は大満足。
自分の体を隅々までお手入れして、やりきった顔をしている。
カミ。
身だしなみを整えるのは大事だ。
でも、ほどほどという言葉も覚えてほしい。
……まあ、うさぎにそんなことを言っても仕方がないのだけれど。
今日もカミは、満足するまでペロペロする。
そして僕は、濡れた体を見ながら思う。
お前、きれいになったんじゃなくて、濡れただけだろ。