カミはときどき、ものすごくカッコつける。
胸を張り、
姿勢を正し、
遠くを見つめる。
本人は決まっているつもりなのだろう。
でも不思議なことに、見れば見るほど笑えてくる。
先日もそうだった。
ふとカミを見ると、床の上で妙な格好をしていた。
胸を張り、
前足を大きく広げている。
その姿を見た瞬間、僕は思った。
「あれ?」
どこかで見たことがある。
なんだっけ。
なんだっけ。
数秒考えて思い出した。
スフィンクスだ。
エジプトにある、あの巨大なスフィンクスである。
写真を見るたびに、
「なんでこんな顔してるんだろう」
と思うあのスフィンクスだ。
そして今、うちの部屋にも小さいスフィンクスがいた。
しかも本人はかなり真剣である。
じっと見ていると、カミもこちらに気づいた。
普通なら、
「なに見てるんだ」
という顔をするはずだ。
ところが違った。
なんだか少し誇らしそうなのである。
むしろ、見られて嬉しそうだ。
たぶん頭の中では、こう思っている。
「気づいたか」
「やっと気づいたか」
「今日の俺、かなり決まってるだろ」
と。
しかし残念ながら、飼い主が見ているのは、カッコよさではない。面白さである。
本人はモデル気分。
飼い主はうさぎおもしろ見物。
考えていることが、全然違うのである。
でもカミは気づかない。
だからどんどん調子に乗る。
胸を張る。
顔を上げる。
キリッとする。
そして、
「どうだ」
みたいな顔をする。
しかし、うさぎである。
どう頑張っても、最後はかわいいのである。
人間なら違う。
カッコつけると、失敗することがある。
スベることもある。
黒歴史になることもある。
しかしうさぎは無敵だ。
どれだけカッコつけても、
かわいい。
真顔でもかわいい。
怒ってもかわいい。
寝てもかわいい。
つまり失敗しないのだ。
ずるい。
実にずるい。
しばらくすると、スフィンクスだったカミは、突然ゴロンと横になった。
そして三十秒後には寝ていた。
威厳も何もない。
エジプトのスフィンクスが見たら泣くと思う。
でも、その切り替えの早さも含めて、やっぱりうさぎは面白い。
今日もカミは、たまにカッコつける。
そして僕は思う。
本人はモデルのつもり。
飼い主はスフィンクスだと思っている。
この認識のズレが埋まる日は、たぶん来ない。