うさぎの顔を正面から見るとかわいい。
これは誰もが知っている。
丸い。
優しい。
ふわふわ。
いかにも「うさぎです」という顔をしている。
ところが。
見る角度を変えると話は変わってくる。
初めてこの写真を見た時、私は思った。
うさぎじゃない。
富士山だ。
いや正確には、最初はおにぎりだと思った。
でも見ているうちに富士山に見えてきた。
さらに見ているとモアイ像にも見えてくる。
自分でも何を言っているのか分からない。
正面から見ると丸顔なのに、下から見ると急に三角形になる。
首元の毛はふわふわで、まるで高級な絨毯みたいに広がっている。
鼻は逆三角。
口も三角。
その間を一本の線が真っすぐつないでいる。
そして前足はきちんと揃っている。
たぶん本人は普通に座っているだけなのだが、こちらは何かの作品を見ている気分になる。
もしこれが海の近くに置かれていたらどうだろう。
観光名所になる気がする。
「富士山うさぎ像」
記念撮影スポット。
入場無料。
売店あり。
うさぎまんじゅう販売中。
たぶん私は買う。
しかし不思議なのは、本人が何も狙っていないことである。
人間なら、少しでも良く見られようとする。
写真写りを気にする。
角度を探す。
表情を作る。
でもカミは違う。
ただ座っているだけだ。
それなのに、見る人の想像力だけが勝手に暴走する。
富士山。
おにぎり。
モアイ像。
象。
どれも似ていないのに、なぜか見えてしまう。
私は時々思う。
うさぎの面白さは、ただかわいいだけではない。
見ている人間に勝手な想像をさせるところにもある。
「怒っているのかな」
「眠いのかな」
「何を考えているのかな」
そして今回なら、「日本一を目指しているのかな」である。
もちろん実際は違う。
カミはたぶん何も考えていない。
牧草。
昼寝。
おやつ。
昼寝。
牧草。
そのくらいだと思う。
でも人間は勝手に意味を探してしまう。
だから富士山に見える。
だからモアイ像に見える。
だから面白い。
そして私はこの写真を見るたびに思う。
日本一になろうと頑張っているのは、実は人間の方かもしれない。
毎日忙しく働いて、勉強して、悩んで、目標を追いかける。
でもカミは違う。
富士山みたいな顔で座っているだけだ。
それなのに、なんだか負けた気がする。
今日も富士山うさぎは、何も考えていない顔で座っている。
そして私は、その姿を見ながら勝手に人生について考えている。