【うさぎは嫉妬する?】なぜカミは初代うさぎの写真立てを倒すのか
うちのうさぎ、カミには前科がある。
初代うさぎの写真立てを倒すのである。
しかも一回ではない。
二回でもない。
四回目だ。
偶然なら一回で終わる。
二回目なら事故かもしれない。
しかし四回目になると話は変わってくる。
これはもう計画的犯行である。
しかも倒すだけではない。
齧る。
写真立ての角をガジガジする。
僕からすると許しがたい。
なぜなら、その写真立てには初代うさぎの写真が入っているからだ。
僕にとっては大切な思い出である。
だからその日も説教をした。
「カミ!いい加減にしろ!」
するとカミは、
「ぷぅ~」
と返事をした。
まったく反省していない。
むしろ途中から目を閉じ始めた。
話を聞きながら寝ているのである。
さらに時間が経つにつれて、
「話長くない?」
みたいな顔までしてきた。
反省ゼロ。
うさぎ界なら停学レベルである。
しかし、そのあとふと思った。
もしかしてカミは悪くないのではないか。
僕にとっては大切な写真立てでも、カミにとってはただの物だ。
思い出も知らない。
初代うさぎのことも知らない。
写真に込められた気持ちも分からない。
ただ目の前に置いてあるだけの物である。
そう考えると少し見方が変わる。
人間は思い出を物に残す。
写真。
手紙。
プレゼント。
卒業アルバム。
どれも大切にする。
でも動物は違う。
今を生きている。
昨日の思い出より、
今の牧草の方が大事だ。
昔の写真より、今の寝場所の方が大事だ。
だからカミからすると、お気に入りの場所にある写真立ては、
「そこに置いてある謎の障害物」
だったのかもしれない。
実際、写真立てが置いてあった場所はカミのお気に入りの場所だった。
よくそこで寝る。
よくそこでくつろぐ。
だから、
「なんか邪魔だな」
と思って押した可能性はある。
人間なら、
「初代うさぎの写真だから触らないでおこう」
と考える。
でもカミには関係ない。
むしろ、
「なんでここに板が置いてあるんだ?」
くらいにしか思っていないだろう。
そう考えると少し面白い。
僕は思い出を守ろうとしている。
カミは快適な空間を守ろうとしている。
お互い真剣なのだ。
ただ価値観が違うだけである。
一時期、
「もしかして嫉妬しているのか?」
とも考えた。
初代うさぎの写真だから気に入らないのではないか。
自分以外のうさぎが写っているから怒っているのではないか。
でも、それはたぶん違う。
もし嫉妬しているなら、
写真立てを見るたび怒るはずだ。
ところがカミは普段まったく気にしていない。
ただ、自分が通りたいときだけ倒す。
結局のところ、
嫉妬ではなく、
「そこ通りたいんだけど」
だったのだろう。
なんとも、うさぎらしい理由である。
僕にとって大切な物。
カミにとって邪魔な物。
その違いを考えていたら、少しだけ笑ってしまった。
たぶんカミは今日も思っている。
「なんでそんなに怒るんだ?」
と。
そして僕は思っている。
「なんでそこを通るんだ?」
と。
たぶん、お互い一生分かり合えない。
でも、それでいい。
だってカミはうさぎなのだから。
ただ一つだけ確かなことがある。
写真立ては今日から少し高い場所へ移動する。
思い出を守るためではない。
五回目の犯行を防ぐためである。