うさぎには機嫌がある。

それは間違いない。

そしてうさぎには、「今なら触ってもいい時間」と「今は絶対に触るな時間」が存在する。

うちのカミの場合、その境界線はかなり分かりやすい。

牧草を食べている時は機嫌がいい。

おやつを見つけた時も機嫌がいい。

撫でてほしい時は、自分から頭を差し出してくる。

こういう時に触ると、「もっと撫でろ」という態度になる。

しかし逆の時間もある。

それが寝ている時だ。

しかもエアコンが効いた快適な部屋で熟睡している時は、たぶん一日の中でもっとも触るなという時間だ。

人間でもそうだ。

夏の暑い日。

涼しい部屋。

お気に入りの布団。

そして眠気。

この状況で起こされたら誰だって機嫌が悪い。

カミだって同じである。

その日もカミはエアコンの風が気持ちよく当たる場所で寝ていた。

見ているだけで幸せそうだった。

いや、幸せそのものだった。

ところが私は思ってしまった。

「ちょっと起こしてみようかな」

と。

今思えば完全に余計なお世話である。

しかし人間という生き物は、平和な時間を見るとちょっかいを出したくなる。

寝ている猫を触る。

犬に話しかける。

そしてうさぎを起こす。

ろくなことをしない。

私はカミに手を伸ばした。

そして軽く触った。

その瞬間だった。

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ものすごく嫌そうな顔をされた。

怒っている。

間違いなく怒っている。

ただし、いつものような怒り方ではなかった。

普段なら、「何だコノヤロー」と言わんばかりの勢いで向かってくる。

ひどいときには、足ダンを5回くらいすることもある。

しかしこの時のカミは違った。

怒っている。

確実に怒っている。

でも眠い。

とにかく眠い。

だから怒る気力が足りない。

目だけは、「お前さぁ……」と言っている。

でも身体がついてこない。

まるで休日の昼寝中に無理やり起こされたお父さんみたいな顔だった。

私はその顔を見ながら思った。

もしかすると今、カミの中では大きな葛藤が起きているのではないか。

怒りたい。

本当は怒りたい。

しかし眠い。

とても眠い。

攻撃するには体力がいる。

立ち上がるのも面倒だ。

できればこのまま寝たい。

そんな感情が頭の中でぶつかり合っているように感じた。

たぶんカミはこう思っていた。

「おい」

「なぜ起こした」

「まだ寝始めたばかりなんだが」

「しかも今めちゃくちゃ快適なんだが」

「その辺分かってる?」

と。

こちらとしては少し触っただけのつもりだった。

しかしカミからしたら違う。

最高の睡眠時間を邪魔されたのである。

人間で言えば、やっと寝ついた瞬間に、「ねえねえ」と肩を揺すられるようなものだ。

腹が立たないわけがない。

それでもカミは攻撃してこなかった。

正確に言うと、攻撃できなかったのかもしれない。

怒りより眠気が勝ったのである。

これは新しい発見だった。

うさぎの攻撃力は体調や気分によって変わる。

そしてどうやら、快適なエアコン部屋で眠っている時は攻撃力が大幅に下がるらしい。

もちろん、だからといって寝ているうさぎをわざと起こすことはおすすめしない。

カミがたまたま我慢してくれただけで、本気で嫌がる子もいると思う。

だから何度もやるつもりはない。

でもこの時だけは思った。

カミは優しくなったのではない。

眠気に負けただけだ。

結局その後、カミは私を一瞬だけ見た。

そして、「もういいから寝かせてくれ」と言いたげな顔をして再び目を閉じた。

私は反省した。

そしてそっと離れた。

うさぎにも守られるべき睡眠がある。

次からは邪魔しないようにしよう。

たぶん。

たぶん。

いや、でも…。

いやいや、でも…たぶんまたやる。