最近、カミに呼び出された。
正確に言うと、呼び出された気がした。
そのときの顔がこれである。
どう見ても何か言いたそうだ。
しかも、ただ見ているだけではない。
「ちょっと時間あるか?」
と言いたげな顔である。
上司が会議室に呼ぶときの顔に近い。
嫌な予感しかしない。
僕は最近、何かカミに悪いことをしただろうか。
思い返してみる。
まず思い当たったのは、ご飯だ。
先日、おやつを少し減らした。
健康のためである。
愛情である。
しかし、カミからしたら、
「福利厚生の削減」
である。
その件について抗議したいのかもしれない。
「話がある」
「はい」
「最近、パパイヤの支給量が減っている」
「健康のためだよ」
「それは会社側の都合だろう」
完全に労働組合である。
いや、うさぎ組合か。
次に思い当たったのは、昼寝である。
カミは気持ちよさそうに寝ている。
すると僕は近づく。
そして撫でる。
さらに頬を近づける。
ついでに匂いを嗅ぐ。
今書いていて思ったが、なかなか迷惑である。
もし僕が寝ていて、
知らないおじさんが近づいてきて、
「かわいいなあ」
と言いながら頭を触り始めたら通報する。
カミも、その件について正式な苦情を申し立てたいのかもしれない。
「最近、睡眠妨害が多い」
「愛情表現だよ」
「愛情なら許されると思うな」
たしかに正論である。
僕は少し不安になった。
もしかすると、もっと重大な話かもしれない。
例えば縄張り問題だ。
カミのお気に入りの場所に僕が座ることがある。
するとカミは不満そうな顔をする。
もしかすると今日は、
「退去勧告」
かもしれない。
いよいよ追い出されるのだろうか。
家賃を払っているのは僕なのだが。
そんなことを考えながら見つめていると、カミもじっとこちらを見ている。
やっぱり何かある。
間違いない。
僕は覚悟を決めた。
「カミ、何が言いたいんだ?」
するとカミは立ち上がった。
ゆっくりこちらへ歩いてくる。
やはり話があるのだ。
僕は固唾をのんだ。
そしてカミは僕の横を通り過ぎた。
ご飯の器の前で止まった。
そして振り返った。
・・・・・・。
なるほど。
話し合いではなかった。
ただの催促だった。
どうやら僕は、
会社の上司に呼び出されたのではなく、
レストランの店員として呼ばれていただけらしい。
それでも僕は立ち上がる。
そしてペレットを準備する。
結局のところ、この家で一番偉いのは僕ではない。
カミである。
少なくとも、カミはそう思っている。