最近、うちのうさぎのカミが、少し太った。

原因はわかっている。

100%、僕である。

カミは、ご飯が欲しくなると近寄ってきて、僕の手をペロペロ舐める。

しかも、上目遣いで見てくる。

あれは危険だ。

人間ならまだ耐えられる。

でも、うさぎの上目遣いは理性を壊す。

「もうちょっとだけね」

そう言いながら、何度ペレットを追加したかわからない。

結果、カミは順調に丸くなっていった。

そして、なぜか僕も丸くなっていった。

人は、自分だけ太ると反省する。

でも、うさぎと一緒に太ると、“仲間感”が出るので危険である。

「これは幸せ太りだから」

という、意味不明な言い訳まで始まる。

しかし、ある日ふと思った。

このままではまずい。

カミはうさぎだ。

太りすぎると足腰にも負担がかかる。

人間みたいに、

「最近ちょっと腹出てきたな〜」

で済まない。

だから僕は決意した。

カミと一緒にダイエットを始めることにしたのである。

とはいえ、カミはダイエットの意味など知らない。

人間は、

「未来の健康のために今を我慢する」

という発想をする。

でも、動物は違う。

「今、ご飯が食べたい」

それだけだ。

だからカミからすると、

「昨日まで出てきた量が、なんで今日から減ってるんだ?」

という話である。

当然、不満そうだった。

ペレットを半分にした初日。

カミは勢いよく食べたあと、僕をじっと見た。

その目が、

「……少なくないか?」

と言っている気がした。

さらに、餌箱をツンツンし始める。

ホリホリする。

軽くキレている。

完全にクレーマーである。

でも、数日続けていると、不思議なことが起きた。

最初はイライラしていたカミが、少し落ち着いてきたのだ。

むしろ前より動く。

走る。

部屋をぴょんぴょん跳ねる。

僕自身も、身体が軽くなってきた。

そして、数日続けていると、不思議なことが起きた。

最初は不満そうだったカミが、少しずつ前より動くようになったのだ。

部屋を走る回数が増えた。

ジャンプも増えた。

なんとなく、身体が軽そうに見える。

そして僕自身も、前より少し身体が楽になっていた。

そこで、ふと思った。

人間もカミも、「今ほしいもの」に弱いのかもしれない。

お腹が空けば食べたい。

疲れていれば楽をしたい。

欲しいと思えば、今すぐ手に入れたい。

「未来のために今を我慢する」というのは、簡単そうで難しい。

実際、僕もカミも、「今ほしい」に負けた結果、しっかり太った。

でも今回は、少し我慢してみたことで、あとから身体が楽になった。

これって、ダイエット以外でも同じなのかもしれない。

勉強もそう。

筋トレもそう。

仕事もそう。

やっている最中は、

「これ意味あるのかな」

と感じる。

すぐには変化が見えないからだ。

でも、続けた人だけが、あとから、

「変わっている」

と気づける。

カミは、ダイエットの意味なんて理解していないと思う。

ただ、「なんか最近ご飯少ないな」と思っていただけかもしれない。

それでも、身体はちゃんと変わっていた。

人間も、案外カミと同じなのかもしれない。

目の前においしいものがあれば食べたくなるし、楽なほうへ流れたくなる。

僕だって、「今日くらいいいか」と思って何度も食べすぎてきた。

でも、その「今日くらいいいか」を続けた結果、僕もカミもちゃんと太った。

だから今回、少しだけ我慢してみた。

すると最初はつらかった。

カミは不満そうだったし、僕も腹が減って機嫌が悪くなった。

でも、数日すると、カミは前より走るようになった。

僕も前より身体が軽かった。

そこで初めて、

「ああ、我慢って、苦しめるためにするんじゃないんだ」

と思った。

今だけ満足するためじゃなく、“これから先も元気でいるため”にするものなんだと。

もちろん、我慢ばかりじゃ続かない。

カミだって、おやつを全部禁止されたら絶対に嫌になる。

だから、たまには甘やかす。

僕も食べる。

カミも食べる。

でも、「欲しがるから与える」と、「元気でいられるようにと考えて与える」は、似ているようで少し違う。

それを今回、カミとのダイエットで教えられた気がする。

ちなみに最近のカミは、前よりよく走る。

ジャンプも増えた。

そして、ご飯の時間になると、相変わらず上目遣いで見てくる。

……反省したはずなのに、また負けそうになる。

たぶんダイエットで一番危険なのは、空腹ではない。

うさぎの「ちょうだい」である。