食事の時間になると、カミは性格が変わる。
普段は写真を撮ろうとすると嫌そうな顔をするのに、ご飯の前では完全に無防備だ。
エサ箱に顔を突っ込み、鼻や髭にエサをつけながら、モグモグと食べ続ける。
とにかく夢中である。
誰かに取られるわけでもない。
チモシーだって食べ放題だ。
なのに、毎回ものすごい勢いで食べる。
見ているこちらが心配になるくらい、速い。
「そんなに急がなくても大丈夫だよ」
毎回そう思う。
人間の世界では、早食いは体に悪いと言われている。
よく噛まないから太りやすいとか、血糖値が急に上がるとか、いろいろ理由があるらしい。
だから私は、カミにももう少し落ち着いて食べてほしいと思っている。
しかし、早食いは悪いことばかりでもない。
以前、自己啓発本で「成功する人は食べるのが速い」と書かれているのを読んだことがある。
仕事ができる人は、判断も行動も速い。食事に時間をかけない。だから成功する、という理屈だった。
本当かどうかは知らない。
でも、社会の中で「速さ」が評価される場面が多いのは事実だと思う。
会社員時代、昼休みに食べるのが極端に遅い人がいた。
本人は悪気がないのだろうが、周囲は食べ終わっても席を立てず、待つことになる。
すると、なんとなく空気が悪くなる。
逆に、食べるのが速い人は、「合わせやすい」「気を遣わなくていい」と自然と重宝された。
だから、人間社会では「早くできる人」が便利な存在として扱われやすい。
気づけば私たちは、食事まで効率を求めるようになっている。
そう考えると、カミの早食いも、生き物として自然なことなのかもしれない。
野生では、のんびり食べていたら危険だったのだろう。
誰かに奪われるかもしれないし、敵に襲われるかもしれない。
だから、「食べられる時に速く食べる」という本能が残っているのかもしれない。
ただ、不思議なのは、人間も似たようなことをしている点である。
人間は、不思議なくらい「急がなくてもいい場面」で急ぐ。
・エレベーターの「閉」ボタンを連打したり、コンビニのレジで少し待つだけでイライラしたりする。
・数分変わるわけでもないのに、信号が点滅すると走り出す。
・誰かに奪われるわけでもないのに、「早くしなければ」と焦ってしまう。
私たちは、文明の中で暮らしているはずなのに、どこか野生動物みたいだ。合理的な理由がなくても、「急ぐ」という反射がいつのまにか体に染みついている。
カミを見ていると、そんなことを思う。
今日もカミは、エサ箱に顔を突っ込みながら、すごい勢いで食べていた。
鼻にエサをつけたまま、夢中で食べる姿は、やっぱり少し面白い。
でも同時に、「急ぐ」という行動の正体を見せられている気もする。
カミ。
誰も取らないから、そんなに慌てなくてもいいよ。
そう思いながら見ていたけれど、本当は、それを言われるべきなのは人間のほうかもしれない。