最近、カミを見ていて思う。
こいつは案外、人生の達人かもしれない。
カミは病気を抱えている。
だから僕は、ときどき考えてしまう。
この楽しい毎日が、あと、どれくらい続くのだろうかと。
もちろん未来のことなんて誰にも分からない。
でも、体調が悪そうな日を見ると、どうしても不安になる。
食欲が落ちている日。
じっとしている時間が長い日。
そんな日は、
「明日は元気になってくれるだろうか」
と願わずにはいられない。
でもカミを見ていると、そんな様子はあまりない。
体調が良い日は、
とにかく全力で遊ぶのである。
走る。
跳ねる。
いたずらする。
怒られても気にしない。
数分後にはまた同じことをする。
反省という言葉を知らない。
ある意味うらやましい。
先日もそうだった。
その日はきれいな満月が出ていた。
窓から月の光が差し込み、部屋の中が少し明るくなっていた。
僕は何となく月を眺めていた。
するとカミも月を見ていた。
いや、正確には見ていたように見えた。
そして次の瞬間。
突然、戦闘態勢に入った。
「かかってこいや」
こんな顔である。
いやいや。
相手は満月だぞ。
月にケンカを売るな。
しかも相手は地球から38万キロ離れている。
絶対に届かない。
ところがカミは諦めない。
「相撲でもええぞ」
いや、だから相手は月だ。
どうやって土俵に上がるんだ。
そして最後には、
「頭突きや!」
とでも言いたげな顔になっていた。
たぶん満月は何もしていない。
完全な言いがかりである。
でも、その姿を見ていて少し思った。
カミは病気のことばかり考えて生きていない。
体調が良い日は遊ぶ。
楽しい日は楽しむ。
生意気な日は生意気になる。
僕とケンカもする。
ご飯を要求する。
撫でろと命令する。
そして満月にも挑戦する。
カミにとって病気があることと、人生を楽しむことは、別の話なのかもしれない。
人間はどうしても、悩みがあると悩みだけを見てしまう。
不安があると不安だけを見る。
病気があると病気だけを見る。
でも本当は、その横に楽しいこともある。
笑えることもある。
好きな人との時間もある。
美味しいご飯もある。
満月もある。
カミは毎日それを教えてくれている気がする。
未来のことは分からない。
だから不安になる。
でも未来を心配して今日を全部失ってしまったら、それは少しもったいない。
体調が良い日なら遊べばいい。
笑える日なら笑えばいい。
月がきれいなら眺めればいい。
カミは今日も元気に走り回っている。
そしてたぶん今も思っている。
「満月よ。今日こそ決着をつけようや」
と。
いや、やめてくれ。
病気には勝ってほしいけど、月には勝たなくていいから。
そんなことを思いながら、僕は今日もカミを見ている。
そして願う。
明日もまた、
カミが生意気な顔で僕に文句を言ってくれますように。
それがきっと、一番幸せなことだから。